読後感

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新(磯田 道史)

 タイトルに引かれる所は無く(武士にも家計簿にも興味ないし)、面白い?・・・。っと思いつつも読み進めてみたら、意外に面白く一気に読んでしまった。
 どうしても歴史研究家と言うと堅苦しいイメージがあるが、著者が古本屋(の目録)で見つけた古文書にワクワクして購入した経緯から書かれ、内容も事実のみを淡々と語るのではなく、そのときの時代背景を交えて読みやすくなっている。
 ただの家計簿をここまで紐解いて、分かりやすくかつ面白く仕上げた著者の才能なんだろうけれど。

 刀を売ってまで捻出しなければならない節約できない身分費用(祝儀交際費・儀礼行事)の内情ってすさまじい。
 娘の数え2歳のお祝いに鯛が出せないので、鯛の絵を描いてお祝いしたことまで生々しく書かれていて、著書の『「絵の鯛だけではな、かわいそうだ」と小鯛と鰯の料理を持ち込んでいる。家計簿の無味乾燥な記述からはわからないが、たぶん、この小鯛をそっと孫娘の口にはこび、食べさせてやったのであろう。』っと、ちょっとおセンチな作者のコメントが至るところに見受けられて、読みやすさを増している。

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