読後感

木挽町のあだ討ち

タイトル:木挽町のあだ討ち
発売日:2023.1.18
出版社: 株式会社新潮社
著者:永井紗耶子

 VISA会報誌で紹介されていたので読んでみた。

 書籍の帯や、Webなどの紹介文で「疑う隙なんぞありはしない、あれは立派な仇討ちでしたよ。語り草となった大事件、その真相は――。」とある。「その真相は--」となると、むしろ真逆の真相であることが安易に類推されてしまい途中でオチというか、仕掛けに予想がついてしまった。
 ただ、本著は推理小説ではないので、オチが見えたところで楽しめないわけではない。むしろ、そこ(あだ討ちの真相)を楽しむ小説ではないことは読み終えたら分かる。

 最初は「少し陰のある暗い話しなのか」と思って読み進みえていた。しかし、すぐに陰はあっても陰でない。漢方的にいうと「陰中に陽あり、陽中に陰あり」な感じで、嫌な感じはなくむしろ清々しく読み進められた。音楽でも聴いているかのような気分になれる小気味良い読みやすい文体。無駄のない洗練された文章。そしてなにより面白い。最後に集約され、一気に繋がる各登場人物たち。

 最後の最後に「あだ討ち」の意味が明かされ、「あ、なるほど。」ってなった。


 あとは、ほとんど読んだことのない時代小説。知らん単語が多かった。今の時代、使うこともない単語も多い。
 何度も辞書を引いた(以下)

  • 白皙[はくせき]
    皮膚の色の白いこと。また、そのさま。いろじろ。
  • 木戸芸者 [きど‐げいしゃ]
    〘名〙 江戸時代の劇場で、狂言の替わり目などに、木戸口の台上で配役をよみ上げ、役者の声色などして客を集めた芸人。
  • 外郎売[ういろううり]
    外郎を売り歩く行商人。早口の口上で有名。
  • 外郎[ういろう]
    外郎家が北条氏綱に献じてから小田原の名物となった丸薬。主に消化器疾患に用いられるが、痰たん切りや口臭を消すなどの効能もあり、また戦陣の救急薬ともしたという。殿上人が冠の中に入れて珍重したところから透頂香とうちんこうとも。外郎薬。外郎飴。痰切飴たんきりあめ。
  • 総籬[そうまがき]
    江戸新吉原遊郭で、最も格式の高い遊女屋。
  • 岡惚・傍惚[おかぼれ]
    親しい交際もない相手や他人の愛人を、わきからひそかに恋い慕うこと。また、その相手。
  • 幇間・幫間[ほうかん]
    遊客の機嫌をとり、酒興をもりあげることを業とする男。たいこもち。また、人の機嫌をとる者。
  • 頑是無[がんぜな]
    物事の道理が分からない。わきまえがない。聞き分けがない。分別がない。多く、幼少の者のさまにいう。
  • 陰間[かげま]
    江戸時代、まだ舞台に出ない少年の歌舞伎俳優。また、宴席に侍って男色を売った少年。若衆わかしゅ。陰舞。陰郎。
  • 陥穽[かんせい]
    おとしあな。また、人をだましたり失敗させたりするための計略。わな。はかりごと。
  • 怯懦[きょうだ]
    臆病で意志が弱いこと。おじおそれること。また、そのさま。
  • 衒い[てらい]
    ひけらかすこと。へつらうこと。
  • 隠亡[おんぼう]
    死者の火葬・埋葬に携わり、墓守を業とした人。江戸時代、えた(穢多)とともに賤民として差別された。おんぼ。
  • 胡乱[うろん]
    乱雑であること。勝手気ままでやりっぱなしであること。また、そのさま。

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