資格・検定

行政不服審査法

第1章 総則

第2章 審査請求/第1節:審査庁及び審理関係人

第2章 審査請求/第2節:審査請求の手続

第2章 審査請求/第3節:審理手続

第2章 審査請求/第4節:行政不服審査会等への諮問

第2章 審査請求/第5節:裁決

第3章:再調査の請求

第4章:再審査請求

第5章:行政不服審査会等/第1節:行政不服審査会/第1款:設置及び組織

第5章:行政不服審査会等/第1節:行政不服審査会/第2款:審査会の調査審議の手続

第5章:行政不服審査会等/第2節:地方公共団体に置かれる機関

第6章:補則


第1章 総則

第1条:目的など

 行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

第2条:処分についての審査請求

 行政庁の処分に不服がある者は、審査請求をすることができる。(第4条及び第5条第2項の定めるところ)

 (第4条:審査請求をすべき行政庁について。)

 (第5条第2項:再調査の請求をしたときは、再調査の決定後。)

(※処分に不服がある者:法律上の利益がある者。すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者を言う(判例)。つまり、処分の相手方以外でも審査請求ができる。
 ただし、あくまでも判例であって、法律上の利益がある者に不服申立て適格を認めることを明示的には定められているわけではない。)

第3条:不作為についての審査請求

 行政庁に対して法令に基づき処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。

第4条:審査請求をすべき行政庁(審査請求先:審査庁)

  • 当該処分庁
    • 処分庁(不作為庁)に上級行政庁がない場合は当該処分庁(不作為庁)
    • 宮内庁長官庁の長主任の大臣が処分庁の場合も当該処分庁(不作為庁)。
  • 処分庁等の上級行政庁の限界
    • 宮内庁長官庁の長主任の大臣を頭打ちとする。
      (※頭打ちにしないと、すべて内閣総理大臣になってしまう)
  • 最上級行政庁庁(宮内庁長官、庁の長、主任の大臣ではない)
    • 上級行政庁が、宮内庁長官、庁の長、主任の大臣でない場合は、その最上級行政庁。
  • 特別の定め
    • 法律・条例に特別の定めがある場合は当該処分庁、処分庁の上級行政庁以外となる。

(※行政事件訴訟法(第11条)の被告は、基本的には行政庁ではなく、行政主体(国又は公共団体))

第5条:再調査の請求

 処分庁以外の行政庁に対して審査請求ができる場合で、法律に再調査を請求することができる定めがある場合は再調査の請求ができる。
 再調査を請求したときは、再調査の決定が出た後でないと、審査請求はできない。
 ただし、再調査の請求日の翌日から3ヶ月を経過しても再調査請求の決定をしないときは審査請求できるし、他にも正当な理由があれば再調査の決定を待たずに審査請求できる。

第6条:再審査請求

 法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、審査請求の裁決に不服があれば、再審査請求をすることができる。

 再審査請求は原裁決か当該処分を対象として、法律に定められた行政庁に対して行う。

(※条例で再審査請求をすることができる定めはできない)

第7条:適用除外

  • 国会議会の議決や同意・承認を得た上でされる処分
  • 裁判所・裁判官の執行等
  • 検査官会議で決すべきものとされている処分
  • 形式的当事者訴訟によるもの
  • 刑事事件に関する法令に基づいて検察官などがする処分
    (※行政手続法にない)
  • 国税・地方税金融商品取引犯則事件に関する法令に基づいて、関係者(国税庁長官や証券取引等監視委員会など)がする処分
  • 学校、講習所、訓練所、研修所などの一般的な処分
  • 刑務所留置施設等において収容の目的を達成するためにされる処分
  • 外国人の出入国又は帰化に関する処分
  • 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
  • 行政不服審査法に基づいて行われる処分
    (※行政手続法にない)
  • 国等の機関に対する処分で、固有の資格において処分・不作為の相手方となるもの。

第8条:特別の不服申立ての制度

 第7条の適用除外については、別に法令で処分・不作為の性質に応じた不服申し立て制度を設けることは構わない。

第2章 審査請求/第1節:審査庁及び審理関係人

第9条:審理員

 審査庁は審査庁に所属する職員のうちから審理手続きを行うものを指名して、審査請求人に通知しなければならない。審査庁が処分庁でない場合は、処分庁にも通知しなければならない。
 ただし、審査庁が内閣府設置法・国家行政組織法で規定され該当する委員会機関である場合、条例に特別の定めがある場合、審査請求を却下する場合は、審理員の指名や通知は必要ない。

 また、処分・不作為、再調査の請求の決定に関与した者、関与することとのなる者、審査請求人本人や近しい親族、代理人などは審理員になれない。
(※行政不服審査法の不利益処分における聴聞の主宰者は、処分等に関与した者でもなれる。)
(※聴聞の主宰者は、行政庁が指名する職員以外に政令で定める者の場合もある。不服審査の審理員は審査庁に所属する職員から選ばれる。)

第10条:法人でない社団又は財団の審査請求

 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名(団体名)で審査請求をすることができる。

第11条:総代

  • 共同審査請求人は、三人を超えない総代を互選することができる。
  • 総代を決めない場合、審理員は総代の互選を命ずることができる
  • 共同審査請求人は総代の解任をすることもできる。
  • 総代は審査請求の取り下げ以外は一切の行為ができる。
  • 総代が選ばれたら、総代を通じてのみ審査請求に関する行為ができる。
  • 行政庁の通知は、複数人の総代がいても一人の総代に通知すれば良い。

第12条:代理人による審査請求

 審査請求は、代理人によってすることができる。代理人は審査請求の取り下げは特別の委任が必要だが、他の審査請求に関する一切の行為をすることができる。

第13条:参加人

 審理員の許可があれば、利害関係にも審査請求に参加できる。また、審理員から利害関係に参加を求めることもできる。
 代理人による参加も可で、代理人は参加の取り下げは
特別の委任が必要だが、参加に関する一切の行為をすることができる。

第14条:行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置

 法令の改廃などで審査請求の裁決をする権限が他の行政庁に移動した場合は、書類や物件を新たな行政庁へと引き継ぎなくてはならない。
 引き継いだ行政庁は、その旨を審査請求人・参加人に通知しなければならない。

第15条:審理手続の承継

 相続、合併・分割によって権利を承継した場合は、審査請求人の地位を承継する。その場合、証拠書面を添えて、書面で審査庁に届け出なくてはならない。書類の提出があるまでは、元の審査請求人宛の通知だが、承継人へ届いた場合は承継人に対する通知として効力を有す。

 承継人が複数いる場合でも、一人に通知すれば、全員に通知したこととする。

 審査請求人の権利を譲り受けた者(承継ではない)は、審査庁の許可を得て、審査請求人の地位を承継することができる。(※審理員の許可ではない)

第16条:標準審理期間

 審査請求の裁決をするまでに標準処理期間の設定は努力義務。設定した場合は、事務所へ備え付けるなどの公にする義務

第17条:審理員となるべき者の名簿

 審理員名簿を作成する努力義務。作成したときは、事務所へ備え付けるなどの公にする義務

第2章 審査請求/第2節:審査請求の手続

第18条:審査請求期間

 処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月。再調査をした場合は、再調査の決定があったことを知った日の翌日から起算して1ヶ月。客観的審査請求期間はともに1年
 郵送に要した期間は参入しない。(※いわゆる発信主義)

(※処分が個別の通知ではなく、多数の関係権利者等に画一的にされる告示の場合は、告示があった日が処分があったことを知った日となる。)

第19条:審査請求書の提出

 審査請求は、審査請求書を提出してしなければならない。
 
他の法律・条例に口頭ですることができる旨の定めがある場合は口頭でもできる

  • 処分についての審査請求書
    • 氏名(名称)、住所
    • 処分の内容
    • 処分を知った日
      (※処分があった日ではない。)
    • 審査請求の趣旨と理由
    • 処分庁の教示の有無とその内容
    • 審査請求の年月日
  • 不作為についての審査請求書
    • 氏名(名称)、住所
    • 不作為にかかる処分についての申請の内容と年月日
    • 審査請求の年月日
  • 共通
    • 法人や財団、総代、代理人の代理人の場合は、代表者や管理人、総代、代理人の指名と住所
    • 再調査の請求の決定を経ない場合は、再調査の請求年月日、決定を経ない理由。
    • 審査請求期間経過後に審査請求をする場合は、その正当な理由。

第20条:口頭による審査請求

 口頭で審査請求をする場合には、書面の記載事項を陳述して、行政庁が内容を記録して、さらに陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認しなければならない。

第21条:処分庁等を経由する審査請求

 処分庁が審査庁でないときは、処分庁に審査請求書を提出(陳述)して、処分庁を経由し審査請求ができる。
 審査請求書の提出を受けた処分庁は直ちに審査請求書又は審査請求録取書を審査庁となる行政庁へ送付しなければならない。
 審査請求期間は処分庁に提出(陳述)があったときに、審査請求があったものとみなす。

第22条:誤った教示をした場合の救済

  • 審査請求ができる処分で、審査請求をすべきでない行政庁を審査請求先として教示した場合。
     教示された行政庁に誤って審査請求がされた場合は、請求を受けた行政庁はすぐに審査請求書を処分庁か審査庁の行政庁に送付して、さらに審査請求人に通知をしなければならない。
     送付先が処分庁の場合、処分庁はさらに審査庁となるべき行政庁へ送付して、かつ審査請求に通知しなければならない。
  • 再調査ができない処分を、再調査ができると誤って教示した場合
     処分庁に再調査の請求がされたときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書を審査庁となるべき行政庁に送付し、請求人に通知しなければならない。
  • 再調査をすることができる処分であって、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合に、再調査の請求がされた場合(再調査は当然に処分庁)。(要するに、再調査も審査請求のどちらでもできたのに、審査請求ができる旨を教示してもらえなかった人の場合だと思う)
     再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は速やかに関連書類を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。受け取った行政庁は再調査に請求に参加する者に通知しなければならない。
  • いずれにせよ、再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、最初から審査庁となるべき行政庁に審査請求がなされたものとみなす。

第23条:審査請求書の補正

 審査請求書が第19条(提出書類の記載内容など)の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない
(※行政手続法の申請に対する不備(第7条)と違い、拒否はできない。)

第24条:審理手続を経ないでする却下裁決

 不備の補正を命じたにもかかわらず補正しない時や、補正できない不適法が明らかなときは、審査庁は審査請求を裁決で却下できる

(※審理手続きを経ないので、審理員も指名されない。)

第25条:執行停止

 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
(※「
処分の効力処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止、その他の措置」を執行停止と言う)

  • 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁
    必要があると認める場合には、審査請求人の
    申立てにより又は職権で、すべての執行停止ができる。
  • 処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁
    審査請求人の
    申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、その他の処置以外の執行停止をすることができる。
    (※その他の処置はできない。)
    ※処分庁の上級行政庁あるいは処分庁のいずれでもない審査庁は職権ではできない。)
  • 申立てがあった場合、重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき
    審査庁は、執行停止をしなければならない。
    公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき又は理由がないとみえるときは、この限りでない。
    (※義務的執行停止は、行政事件訴訟法(第25条)の執行停止と同じ)

 (※処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができない。)

 執行停止の申立てがあったとき、又は審理員から執行停止をすべき旨の意見書が提出されたときは、審査庁は、速やかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。(審査請求人の申し立て、審理員からの意見書、審査庁の職権の3つ)

第26条:執行停止の取消し

 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。

第27条:審査請求の取下げ

 審査請求人は裁決があるまでは、書面でいつでも審査請求を取り下げることができる。

第2章 審査請求/第3節:審理手続

第28条:審理手続の計画的進行

 審査請求人、参加人、処分庁等、審理員は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならない。
(※審査請求人、参加人、処分庁等を「審理関係人」と言う)

第29条:弁明書の提出(弁明するのは処分庁

 審理員は、審査庁から指名されたときは、

  • 審査請求書or審査請求録取書の写しを処分庁等に送付しなければならない。処分庁等が審査庁の時は送付不要。
  • 次に、処分庁に弁明書の提出を求める。
    弁明書には、処分の内容や理由、不作為の理由や予定の時期などを記載する。
    その他、必要書類を弁明書に添付する。
  • 処分庁等から弁明書の提出を受けたら、審査請求人・参加者に送付しなければならい。

第30条:反論書等の提出(反論書の提出は審査請求人。意見書の提出は参加人)

 審査請求人は、弁明書(処分庁提出)に対して、審理員が定めた期間内で反論書を提出できる。
 参加人は同様に、
意見書を提出できる。
 審理員は、反論書を処分庁等・参加人に、意見書を処分庁・審査請求人にそれぞれ送付しなければならない。

第31条:口頭意見陳述

 審査請求人・参加人からの申し立てがあれば、困難な場合を除いて、口頭で意見を述べる機会を与えなければならない
※申立人(審査請求人・参加人)は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる

第32条:証拠書類等の提出

 審査請求人・参加人・処分庁等は、証拠書類や証拠物(物件)を提出することができる。
 審理員が期間を定めたときは、その期間内に提出しなければならない。

第33条〜35条:物件の提出要求、参考人の陳述及び鑑定の要求、検証

 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てか、職権で、所持人に対し書類や物件の提出を求めたり、参考人として陳述を求めたり、必要な場所の検証をすることができる。

第36条:審理関係人への質問

 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができる。

第37条:審理手続の計画的遂行

 審理員は、審理すべき事項が多かったり錯綜しているときは、審理関係人(全ての心理関係にを招集する必要はない)を集めて意見を聴取することができる。意見聴取したら、31条〜36条までの審理手続きの期日や場所を決めて、さらに終結予定時期を決定してみんなに通知する。
 審理関係人が遠隔地の場合は、何らかの通話方法を利用しても良い。

第38条:審査請求人等による提出書類等の閲覧等(証拠書類等閲覧等請求権

 審査請求人又は参加人は、審理手続が終結するまでの間、審理員に対し、各提出種書類閲覧や写しの交付を求めることができる。審理員は、第三者の利益を害するおそれや正当な理由がなければ、拒むことができない。
 閲覧・交付する場合は、該当提出書類等の提出人の意見を聞かなければならないが、審理員の判断で意見を聞く必要がないと判断すれば聞かなくても良い。
 閲覧の日時や場所は審理員が指定する。また、閲覧には政令(条例)で定める手数料を納めないといけないが、経済的困難者は審理員の判断で減額や免除も可。

(※証拠書類等:審査請求人・参加人が提出した証拠書類等、処分庁等が提出した書類等(32条)および物件の提出要求に応じて提出された書類その他物件(33条))

第39条:審理手続の併合又は分離

 審理員は、必要に応じて、複数の審理手続きを併合したり、あるいは併合された複数の審理手続きを分離もできる。

第40条:審理員による執行停止の意見書の提出

 審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる。

第41条:審理手続の終結

 審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。
 さらに、弁明書、反論書、意見書、証拠書類・物件などが提出されないときや、申立人が口頭意見陳述に出頭しない時なども審理員は審理手続きを終結することができる。
 集結したら、審理員は速やかに、みんな(審理関係人)に、審理手続を終結した旨、審理員意見書・事件記録を審査庁に提出する予定時期を通知する。

第42条:審理員意見書

 審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する審理員意見書を作成して、速やかに事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。

(※審理員意見書:審査庁がすべき裁決に関する意見書)

第2章 審査請求/第4節:行政不服審査会等への諮問

第43条:行政不服審査会等への諮問

 審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、審査庁が宮内庁長官、庁の長、主任の大臣の場合は行政不服審査会、地方公共団体の長の場合は、地方公共団体におかれている機関(第81条)に諮問しなければならない。

 諮問は、審理員意見書と事件記録の写しを添えてする。また審査庁は審理関係人に諮問をした旨を通知して、審理員意見書を送る。

 審議会や議会を経てされた処分や、審査請求人が諮問を希望しない場合、請求を却下する場合、請求の処分を取り消す場合などは諮問しなくてよい。

 (※再調査の請求および再審査請求においても、行政不服審査会等への諮問をする必要はない。)

第2章 審査請求/第5節:裁決

第44条:裁決の時期

 審査庁は、行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき、あるいは行政不服審査会等へ諮問しないのであれば審理員意見書が提出されたときは、遅滞なく裁決をしなければならない。

第45条:処分についての審査請求の却下又は棄却(審査庁の裁決)

 審査請求が法定の期間経過後不適法である場合には、当該審査請求を却下する。
 処分についての審査請求が
理由がない場合には、当該審査請求を棄却する。
 場合によっては
事情判決(棄却)することができる。ただし、裁決の主文で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

第46条:処分についての審査請求の認容

  • 処分(事実上の行為を除く)について理由がある場合
     審査庁は処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
     ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない
    • 処分に理由があり、申請を却下・棄却する処分のの全部・一部を取り消す場合
      • 上級庁が審査庁:処分庁に処分を命ずる
      • 処分庁が審査庁:処分庁自ら処分をする。

第47条:

 事実上の行為についての審査請求が理由がある場合には、違法又は不当である旨を宣言するとともに、審査庁が処分庁の上級行政庁の場合は事実上の行為の一部・全部の撤廃か変更を命じ、審査庁が処分庁であれば、自ら一部・全部の撤廃か変更をする。審査庁が上級庁でないときは、変更は命じられないので、全部・一部の撤廃を命じる。

第48条:不利益変更の禁止

 処分・事実上の行為に対する審査請求が容認裁決がされたら、審査請求人に対して不利益な変更をすることはダメ。

第49条:不作為についての審査請求の裁決

 不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされた場合や不適法である場合には却下する。
 不作為についての審査請求が理由がない場合には棄却する。
 不作為についての審査請求が理由がある場合には、裁決で当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。上級行政庁は処分をすべきことを命じ、不作為庁が審査庁のときは処分を行う。

第50条:裁決の方法

 審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。

  • 主文
  • 事案の概要
  • 審理関係人の主張の要旨
  • 理由(審理意見書や審査会等の答申書と異なる内容である場合は、その理由も)

 再審査請求ができる裁決をする場合は、再審査請求ができることと請求先の行政庁、再審査請求期間を記載して教示しなければならない。
(※再審査請求期間(第62条)/主観:翌日から1ヶ月。客観:翌日から1年)

第51条:裁決の効力発生

 裁決は、審査請求人に裁決書の謄本(全部の写し)が送達された時に、その効力を生ずる。
 所在がわからない場合は、公示の方法により、掲示の翌日から起算して2週間を経過したとき。
 審査庁は、裁決書の謄本を参加人と処分庁等にも送付しなければならない。

第52条:裁決の拘束力

 裁決は、関係行政庁を拘束する。
 処分が裁決で取り消されるなどした場合は、処分庁は
裁決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない。
  処分が公示されていた場合は、取消し・変更などがあった旨を
公示し、処分の相手方以外の利害関係者に通知が行っていたのであれば、その利害関係者へ通知しなければならない。

第53条:証拠書類等の返還

 審査庁は、裁決をしたときは、速やかに、提出要求に応じて提出された書類や物件をその提出人に返還しなければならない。

第3章:再調査の請求

第54条:再調査の請求期間

 主観的再調査請求期間:翌日から起算して3ヶ月。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
 客観的再調査請求期間:翌日から起算して1年。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

第55条:誤った教示をした場合の救済

 再調査の請求ができるのに、その旨を教示しなかった場合に審査請求がされて、審査請求人から申立てがあったときは、審査庁は処分庁へ、審査請求書又は審査請求録取書を送付しなければならない。すでに審査請求人に弁明書が送付されていた場合は除く。

 送付を受けた処分庁は、審査請求人・参加人に通知をする。そして、初めから処分庁に再調査の請求があったものとみなされる。

第56条:再調査の請求についての決定を経ずに審査請求がされた場合

 再調査を請求したときは、再調査の決定が出た後でないと審査請求はできない(第5条)が、決定が出る前に審査請求がされたときは、再調査の請求は取り下げられたものとみなす
 ただし、審査請求をした時点で、すでに再調査の請求により処分の取消しや事実上の行為を撤廃している場合は、
審査請求が取り下げられてものとみなす

第57条:三月後の教示

 再調査を請求したときは、再調査の決定が出た後でないと審査請求はできない(第5条)が、3ヶ月が経過してもまだ再調査の請求が係属しているときは、審査請求をすることができる。
 処分庁は、その旨を遅滞なく、
書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。

第58条:再調査の請求の却下又は棄却の決定

 調査の請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、却下する。
 再調査の請求が理由がない場合には、処分庁は、決定で、当該再調査の請求を棄却する。
(※再調査の決定に事情採決はない)

第59条:再調査の請求の認容の決定

 処分についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
 事実上の行為についての再調査の請求が理由がある場合には、処分庁は、決定で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更する。
 処分・事実上の行為ともに、不利益変更はできない。

第60条:決定の方式

 却下、棄却、容認の決定については、主文及び理由を記載し、処分庁が記名押印した決定書によりしなければならない。
 処分庁は、前項の決定書に、再調査の請求に係る処分につき審査請求をすることができる旨並びに審査請求をすべき行政庁及び審査請求期間を記載して、これらを教示しなければならない。

第61条:審査請求に関する規定の準用

  • 第9条第4項
  • 第10条〜第13条
    法人でない社団又は財団の審査請求、総代、代理人、参加人について。
  • 第14条
    行政庁が裁決をする権限を有しなくなった場合の措置
  • 第15条
    審理手続の承継
  • 第16条
    標準審理期間の設定
  • 第18条第3項
    審査請求の送付に要した時間(期間)は算入しない。
  • 第19条(第3項、第5項1号・2号を除く)
    審査請求書の提出とその記載内容など
  • 第20条
    口頭による審査請求
  • 第23条
    審査請求書に不備があったときに補正を求めなくてはならない旨
  • 第24条
    審理手続を経ないでする却下裁決
  • 第25条(第3項を除く)
    執行停止(第3項は上級行政庁に関する記載)
  • 第26条
    執行停止の取り消し
  • 第27条
    審査請求の取り下げ。いつでも書面でできる。
  • 第31条(第5項を除く
    口頭意見陳述(第5項は審理員の許可を得て、処分庁への質問。再調査に審理員はいない)
  • 第32条(第2項を除く)
    証拠書類の提出(第2項は処分庁の証拠書類提出)
  • 第39条
    審理手続の併合又は分離
  • 第51条
    裁決書の謄本が送達されたときに裁決の効力が発生
  • 第53条
    証拠書類等の返還義務。

(※第52条:裁決の拘束力は、再調査請求には準用されていない。)

第4章:再審査請求

第62条:再審査請求期間

 主観的再審査請求:原裁決があったことを知った日の翌日から起算して1ヶ月。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
 客観的再審査請求:原裁決があった日の翌日から起算して
1年。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
(※審査請求、再調査請求の主観は3ヶ月。再審査のみ1ヶ月。)

第63条:裁決書の送付

 再審査庁は、原裁決をした行政庁に対し、原裁決に係る裁決書の送付を求めるものとする。

第64条:再審査請求の却下又は棄却の裁決

 期間経過後、不適法である場合には却下する。
 再審査請求が理由がない場合には、棄却する。
 
原裁決(最初の審査請求の裁決)は違法・不当だけど、処分に違法・不当がない場合も棄却する
 事情判決もある。再審査庁は、裁決の主文で、当該原裁決等が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

(R2-15-2)審査請求の対象とされた処分 (原処分) を適法として棄却した審査請求の裁決 (原裁決) があった場合に、 当該審査請求の裁決に係る再審査請求において、 原裁決は違法であるが、原処分は違法でも不当でもないときは、 再審査庁は、裁決で、 当該再審査請求を棄却する。(正)

第65条:再審査請求の認容の裁決

 原裁決等についての再審査請求が理由がある場合は、原裁決等の全部又は一部を取り消す。
 事実上の行為についての再審査請求が理由がある場合は、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、事実上の行為の全部又は一部を撤廃すべき旨を命ずる。

第66条:審査請求に関する規定の準用

 ほとんど、審査請求に関する規定を準用する。

第5章:行政不服審査会等/第1節:行政不服審査会/第1款:設置及び組織

第67条:設置

 総務省に、行政不服審査会を置く。

第68条:組織

 非常勤委員9人をもって組織するが、3人までは常勤とすることができる。

第69条:委員

 委員は、審査会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は行政に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任命する。罷免も両議院の同意を得て総務大臣ができる
 両議員の同意は場合によっては事後了承も可。
 
任期は3年で再任も可。補欠の委員は前任の残任期間。任期が終了しても後任が決まるまでは職務を行う。給料は別の法律で決める。
 退任後も守秘義務が課され、任期中は積極的な政治活動は制限される。営利事業や他に報酬を得る場合は、総務大臣の許可が必要となる。

第70条:会長

 審査会に、会務を総理、審査会を代表する会長を置き、委員の互選により選任する。会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

第71条:専門委員

 審査会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
 学識経験のある者のうちから総務大臣が任命(非常勤)し、関連する調査が終了したら解任される。

第72条:合議体

 審査会は、9人の委員のうちから、3人をもって構成する合議体で、審査請求に係る事件について調査審議する。全員(9人)で構成する合議体で調査審議することも可。

第73条:事務局

 審査会の事務を処理させるため、審査会に事務局を置く。事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。

第5章:行政不服審査会等/第1節:行政不服審査会/第2款:審査会の調査審議の手続

第74条:審査会の調査権限

 審査会は、必要があると認める場合には、審査請求に係る事件に関し、審査請求人、参加人又は審査会に諮問をした審査庁に、その主張を記載した書面又は資料の提出を求めること、適当と認める者にその知っている事実の陳述又は鑑定を求めることその他必要な調査をすることができる。
(※審査関係人:審査請求人、参加人、審査庁)

第75条:意見の陳述

 審査会は、審査関係人の申立てがあった場合には、当該審査関係人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、審査会が、その必要がないと認める場合には、この限りでない。審査請求人又は参加人は、審査会の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。

第76条:主張書面等の提出

 審査関係人は、審査会に対し、主張書面又は資料を提出することができる。審査会が、主張書面又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

第77条:委員による調査手続

 審査会は、必要があると認める場合には、その指名する委員に、第74条の規定による調査をさせ、又は第75条第1項本文の規定による審査関係人の意見の陳述を聴かせることができる。

第78条:提出資料の閲覧等

 審査関係人は、審査会に対し、審査会に提出された主張書面・資料の閲覧や書面の交付を求めることができる。
 第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。
 閲覧・交付の際には資料の提出人の意見を聴かなければならないが、審査会がその必要がないと認めるときは、この限りでない。
 閲覧等には手数料がかかるが、経済的困難な場合などには減額・免除も可。

第79条:答申書の送付等

 審査会は、諮問に対する答申をしたときは、答申書の写しを審査請求人及び参加人に送付するとともに、答申の内容を公表するものとする。

第80条:政令への委任

 この法律に定めるもののほか、審査会に関し必要な事項は、政令で定める。

第5章:行政不服審査会等/第2節:地方公共団体に置かれる機関

第81条:

 地方公共団体に、行政不服審査会の働きをする執行機関を置くが、現状に応じてその都度(事件ごと)に執行機関としておいてもよい。
 運営などの必要事項は必要事項は条例で定める。

第六章:補則

第82条:不服申立てをすべき行政庁等の教示

 行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。

 利害関係人から、当該処分が不服申立てをすることができる処分であるかどうか並びに当該処分が不服申立てをすることができるものである場合における不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間につき教示を求められたときは、当該事項を教示しなければならない。教示を求めた者が書面による教示を求めたときは、当該教示は、書面でしなければならない。
※審査請求所に記載すべき事項の教示義務はない。

第83条:教示をしなかった場合の不服申立て

 行政庁が前条の規定による教示をしなかった場合には、当該処分について不服がある者は、当該処分庁に不服申立書を提出することができる。
 審査請求書の規定を準用し、不服申立て先が処分庁以外へ審査請求できる処分の場合は、提出を受けた処分庁から不服申し立て先の行政庁へ送付しなければならない。この場合、最初から審査請求がなされたものとみなされる。
(※審査請求ができるのに、処分庁がそれを教示をしなかった場合に、不服申立書が提出されたら、審査請求がされたものとみなす。その場合、処分庁が審査庁の場合はそのまま処理に入り、処分庁以外が審査庁の場合は処分庁が書類を審査庁へ転送する。)

第84条:情報の提供

 審査請求、再調査の請求若しくは再審査請求又は他の法令に基づく不服申立てにつき裁決、決定その他の処分をする権限を有する行政庁は、不服申立てをしようとする者又は不服申立てをした者の求めに応じ、不服申立書の記載に関する事項その他の不服申立てに必要な情報の提供努めなければならない。

第85条:公表

 不服申立てにつき裁決等をする権限を有する行政庁は、当該行政庁がした裁決等の内容その他当該行政庁における不服申立ての処理状況について公表するよう努めなければならない

第86条:政令への委任

 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、政令で定める。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です