ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力/本田 哲也
タイトル:ナラティブカンパニー
初版:2021年5月14日
発行:株式会社東洋経済新報社
著者:本田 哲也[ほんだてつや]
これまでの企業から興味を引かれる物語が発信され、それに何かしらを感じて世論が動き購買活動に動いていた時代から、個々の消費者を巻き込んだ共体験が感じられる、現在進行形の体験がた提案・発信が必要という理解を得た。
特に、「モノよりコト」と言われて久しい。企業が一方的に発信する情報を受けるだけでなく、その情報や物語に「自分ゴト」が加わって、一緒に作り上げていく感覚、消費者自らも入っていけるマーケティング戦略が重要になってくるのだと実感した。さりとて、当然に内輪感ではダメで、本著中では「余白」と表現されていたが、オープンさを持ちながらもコアターゲット層が自分ゴトと置き換えられ、共感できそして共体験できるような仕掛け・投げかけを考えていくことの重要さについて、具体例なども上げながら紹介されている。
ただ、表面だけ取り繕うのではなく、オーセンティシティ(その企業のらしさ)を伴っていないと、消費者にあっという間に見抜かれ、このご時世は拡散されると言う注意点は、まさにその通りだろうと思った。悪い具体例として、ナイキのBLM(Black Lives Matter)運動へのうわべだけの賛同動画が紹介されていた。
少し違和感・・・。
ドイツのメルケル首相と日本の安倍首相の新型コロナウィルス(COVID19)対策への国民へのアピールについて言及している部分がある。
マーケティング(ナラティブ)において重要な「共感を得る」ことにおいてメルケル首相が上手くやったが、安倍首相(当時)は国民の共感を得られていない。だからマーケティングから言うと安倍首相はダメだ。と言う記載。
ナラティブ的には安倍首相は失敗したのかもしれない。本文の通り、アベノマスクは成功したとは言い難い。そこは私も同様にそのように思う。ただし、政治家に求められているのは「結果」である。アベノマスクは一つの過程でしかない。総合的に見て、今日現在(2021年7月)においては、日本政府の取り組みがもたらしたこれまでの結果は、決して世界に遅れをとっているわけでは無い。むしろ、感染者数および経済への影響は他国に比べると明らかに優秀な結果である。
この例からすると(政治的には)「ナラティブ」なんて不要(役に立たない)と言う結論が導き出されてしまい逆効果です。
まさに「試合(ナラティブ)には負けたが、勝負(政治家として治世)に勝った」と安倍首相称および政府は賞賛されなければならない。
あともう一つの違和感は、障害者の障害の害の字を平仮名で書いているところ。害が消極的(ネガティブ)なイメージとするなら、障の字もどちらかと消極的だ。別の言葉で置き換えるならまだしも、害だけ平仮名にするところはまさに表面だけ取り繕った、ホワイトウォッシュ同様に「障害者に配慮してますウオッシュ」の最たるものだと思った次第。
ただ、本著自体はとても参考になった。