ほどよく距離を置きなさい:湯川久子/(1909)
タイトル:ほどよく距離を置きなさい 90歳の現役弁護士が見つけた心の糸のほどき方。
初版:2017年11月30日
発行:株式会社サンマーク出版
著者:湯川久子
副題として「90歳の現役弁護士が見つけた心の糸のほどき方。」とあるので、私としては勝手に、相手と相互に絡まった心の糸を解く手法なり考え方なりが書かれているのだと思っていたが違った。
どちらかと言うと、自分自身の考え方を変えましょうと言う内容。自分自身の考え方を変えると言う点で、先月に読んだ「平気であなたを傷つけてくる人から自分を守る本」に通じるところがあった。
書いてある事は至極真っ当な事で、例えば(相手の浮気が原因などによる)離婚調停などで変に復讐心を燃やして時間を無駄にしたり、裁判がもつれて貰えるものも貰えなくなる様な危険を冒すくらいなら「心機一転、気持ちを入れ替えて、さっさとと貰えるもの(主に金)を貰って、前を向いて次の歩み(人生)を進めた方が良い。」という事が、裁判(調停)事例を絡めて説いている。
至極真っ当なことと言えば、
『人は、自分の正しさを主張して、相手に勝とうとしますが、相手を打ち負かしたところで、何になるでしょうか。』
『正しさや常識は、世代や育った環境によって変わりますし、正解はありません。』
と言う言葉もあった。真っ当すぎて反論は一切できない。同時に「戦争はダメだ。」と同じくらい虚しい言葉でもある。
世の中には、こっちが相手に斟酌して一歩引くと、さらに一歩踏み込んで来てさらに傍若無人に振る舞う様な人間もいてる。日本人にはこの様な人は少ないが、国家および国民そのものがこんな感じの(相手に集[たか]ったり、奪ったりすることが良しとされ、奪われた方が馬鹿扱いされる)国がある。
話が横に逸れてしまった。
あと、下衆で低俗な私なんぞは、著者が弁護士と言うからにはもっとドロドロした話しを期待していた。しかし、裁判事例には重きは置かれていない。あくまでも、「あまり固執しない方が良いですよ、なぜなら・・・」と言う論法を展開する道具として使われている。
一部で古い考えも混在するものの、先にも書いた通り、至極真っ当な事を終始一貫して書かれている。ただ、日々を生きていく中で嫌なことも多く、ついつい真っ当な事を忘れたりする。些細なことで他人を羨んだり、恨んだりしても仕方ないし、自分の正義を振りかざしても軋轢を生むだけ。そんな簡単な事すら忘れてしまいがちになる。そう言う気持に対して、少し落ち着きを取り戻せる本かもしれない。