第153条〜159条
第153条
太阳病,医发汗,遂发热恶寒,因复下之,心下痞,表里俱虚,阴阳气并竭,无阳则阴独,复加烧针,因胸烦,面色青黄,肤瞤者,难治;今色微黄,手足温者,易愈。
太阳病,医生使用发汗法治疗,汗后仍然发热畏寒,于是又用攻下法治疗,误汗伤表,误下伤里,致表里正气均虚,阴阳之气同时虚竭,表证已无而独有里证,故见心下痞满。
医者再用烧针法治疗,致脏气大伤,出现心胸烦躁不安,面色青黄,筋肉跳动的,为难治之候;如果面色微黄、手足温暖的,示胃气尚存,较容易治愈。
太陽病で医者が発汗法で治療したが、依然と発熱畏寒するので、さらに攻下法で治療してしまい、発汗で表を傷つけ、瀉下で裏を傷つけ、表裏ともに虚にいたり、陰陽の気が同時に枯渇して、表証はすでになく裏証だけがまだあり心下が痞満する。
医者が再び、焼き針で治療すると、臓気を大きく傷付けて心胸にイライラして落ち着かない(煩躁不安)症状が出て、顔色が緑味がかった黄色をし、筋肉が痙攣するのは、難治の症候である。もし顔色が黄色味を帯びていて、手足が冷えてなければ、胃気がまだあるので、治しやすい。
※)傷寒論解説(金子幸夫先生)、入門傷寒論(森由雄先生)の中では、青黄は青黄色と訳されている。
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阴阳气并竭:指表里之气均受损。
无阳则阴独:指表证已罢而里证独具。
第154条
心下痞,按之濡,其脉关上浮者,大黄黄连泻心汤主之。
胃脘部痞满,按之柔软,关部脉浮的,用大黄黄连泻心汤主治。
胃腸部が痞満し、撫でると柔軟で、関脈が浮なのは、大黄黄連瀉心湯を用いて治療する。
第155条
心下痞,而复恶寒汗出者,附子泻心汤主之。
胃脘部痞满,而又畏寒汗出的,用附子泻心汤主治。
胃腸部が痞満して畏寒して汗が出るのは、附子瀉心湯を用いて治療する。
第156条
本以下之,故心下痞,与泻心汤。痞不解,其人渴而口燥烦,小便不利者,五苓散主之。
本来因为误下,形成胃脘部痞满,给予泻心汤治疗,痞满却不消除,并见口干燥、心烦、小便不通畅,这是水饮内蓄所致,用五苓散主治。
誤って瀉下させたために胃腸部に痞満が形成され、瀉心湯を与えて治療したが痞満は解消されず、口の乾燥や小便で出が悪くなり、イライラ(心煩)してくるのは、水飲が内部に溜まったためである。五苓散を用いて治療する。
第157条
伤寒汗出解之后,胃中不和,心下痞硬,干噫食臭[注],胁下有水气,腹中雷鸣,下利者,生姜泻心汤主之。
伤寒表证,经用发汗,汗出表证已解,而胃气损伤,胃中不和,水食停滞,出现胃脘部痞满硬结,嗳气有食物腐臭气味,肠鸣较甚,腹泻的,用生姜泻心汤主治。
傷寒表証で、すでに発汗させ表証がすでに解け、胃気が損傷し胃の働きが悪くなり(胃中不和)、胃部が痞満して硬くなり、ゲップは食べたものの臭いが少しして、お腹がゴロゴロ鳴り、下痢するのは生姜瀉心湯を用いて治療する。
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干噫食臭:干噫,即嗳气。干噫食臭,即嗳气中有饮食气味。
腹中雷鸣:即肠鸣
第158条
伤寒中风,医反下之,其人下利日数十行,谷不化,腹中雷鸣,心下痞硬而满,干呕心烦不得安,医见心下痞,谓病不尽,复下之,其痞益甚,此非结热,但以胃中虚,客气上逆,故使硬也,甘草泻心汤主之。
太阳伤寒或中风证,本应发汗解表,医生反而用攻下法,损伤脾胃,导致病人一日腹泻数十次,泻下不消化食物,肠鸣厉害,胃脘部痞满硬结,干呕,心中烦躁不安,医生见胃部痞硬,认为是邪热内结,病邪未尽,又行攻下,致痞胀更甚。
这种情况不是邪热内结,而是中气虚弱,浊气上逆,气结心下,所以胃脘部痞硬,用甘草泻心汤主治。
太陽病傷寒証あるいは中風証で本来なら発汗させて解表させるべきところを医者が誤って攻下法を用いてしまい、脾胃を損傷し、1日に数十回もトイレに行き、便は消化不良を起こし、お腹の鳴りはひどく、胃腸部は痞満して硬く(痞満硬結)、吐き気を催し、気持ちが苛立ち落ち着かない(心中煩躁不安)。医者が胃部の痞硬から邪熱が内に詰まっていて、病邪がまだあると見てとり、再び攻下したので痞えて張るのがさらにひどくなった。
これらの状態は邪熱が内に詰まっている(邪熱内詰)ではなく、中気虚弱で、臭気が上逆して気が心下に集ま(結ぶ)って、胃腸部が痞えて硬くなるのである。甘草瀉心湯を用いて治療する。
第159条
伤寒服汤药,下利不止,心下痞硬。服泻心汤已,复以他药下之,利不止,医以理中与之,利益甚。理中者,理中焦,此利在下焦,赤石脂禹余粮汤主之。复不止者,当利其小便。赤石脂禹余粮汤。
伤寒表证,服了泻下的汤药,导致腹泻不止,胃脘部痞胀硬结。
医生用泻心汤治疗,又用其它药攻下,导致腹泻不止,医生又以理中汤投之,结果腹泻更甚。
究其原因,是因为理中汤是治疗中焦虚寒腹泻证之剂,而此种下利责在下焦不固,应当用赤石脂禹余粮汤主治。
如果用赤石脂禹余粮汤仍然腹泻不止的,则恐怕属水湿内盛之腹泻,应当用分利小便法治疗。
傷寒表証で、瀉下させる湯薬を飲んだため下痢が止まらず、胃腸部が痞満して硬くなった(痞満硬結)。
医者が誤って瀉心湯を用いて、さらにその他の薬で瀉下させたため、下痢が止まらず、さらに理中湯を投与した結果、下痢はさらに酷くなった。
つまりその原因は、理中湯は中焦の虚寒による下痢の証に用いる方剤であり、この種の下痢は下焦が弛んでいる(下焦不固)ことから起こるので、赤石脂禹餘糧湯[しゃくせきしうよりょうとう]を与えて治療すべき。
もし、それで下痢が止まらないのなら、恐らくは水湿が内で盛んになっている(水湿内盛)ことによる下痢である。離水して治療すべきである。